日常会話の中にも「ギブアンドテイク」という言葉が出ます。
日本語に直訳すると「持ちつ持たれつ」という言葉になりますが、世間一般に使用されています。
例えば、相手へお返しするときや、相手からお返しされたときに使用することが多いのではないでしょうか。
今回は、書籍【GIVE & TAKE】ー「与える人」こそ成功する時代ー を読んで、ビジネスに使うことができるのか、というテーマで解説していきたいと思います。
書籍:GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代
著者:アダム・グラント
監訳:楠木 建
出版:三笠書房
目次
人間には「ギバー」「テイカー」「マッチャー」の3タイプある
「ギバー」「テイカー」は何となく分かりますが、「マッチャー」はあまり聞きなれない言葉です。
この3つのタイプについて知るところからスタートです。
- ギバー…人に惜しみなく与える人
- テイカー…真っ先に自分の利益を優先させる人
- マッチャー…損得のバランスを考える人
ギバー(人に惜しみなく与える人)
ギバーは自分の利益より、相手の利益を重んじ行動する他人中心タイプです。
人に何かを与えることは人間の特性であり、本来人間は「何かしてあげたい」と相手のことを考えて行動する生き物なのです。
誕生日や記念日、お祝いなど、イベントごとにはプレゼントを渡すことが人付き合いをしていく中で当たり前なやり取りになっています。
自分以上に相手が何を欲しがり、何を求めているのかを考え行動することで、良好な人間関係を構築します。
テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)
テイカーは自分を有利に働かせ、相手の利益は考えないタイプです。
職場や学校でも、自分の利益を優先させる人はどこにでもいるのではないでしょうか。
ビジネスに於いて、大きな案件を受注できた時は、あたかも自分の成果によるものとアピールします。
良好な人間関係は作りづらいタイプなのは言わずもがなですが、成功する可能性は高い反面、恨まれてしまうことがあります。
中には与えるテイカーも存在しますが、それは「テイク」することを目的として相手に与えていると言えます。
マッチャー(損得のバランスを考える人)
マッチャーは相手が自分に与えてくれるか見極めてからでないと相手に与えないタイプです。
自分が相手に与えたときは見返りを求め、何も返ってこなかった場合は、蔑みます。
この3つのタイプを見たときに、誰もが自分はマッチャーかも?と思ったのではないでしょうか?
ボクもこのマッチャーだと思いました。
ビジネスで成功するのも失敗するのも共に「ギバー」
本書のタイトルで「与える人こそ成功する時代」と言っているくらいだからギバーが成功するんでしょ?と言いたいところですが、成功するのも失敗するのも「ギバー」と言われています。
どういうことなのか紐解いていきましょう。
与えるだけのギバーは成功しにくい
相手に与えることで目的を達成してしまう「自己犠牲型」のギバーは成功しにくい傾向にあります。
自分の仕事を後回しにして相手を手伝おうとし、結果自分の仕事の期限に間に合わない。典型的なギバーは、他人を手伝ったことで目的が達成されてしまい、見返りは求めません。
これでは成果を上げたくても上げられませんし、職場では「優しい人だけど仕事が遅い」というレッテルを付けられ出世しにくいと考えられます。
また、手伝う相手が「テイカー」だった場合、相手にとってギバーは格好の餌食なのです。
つまりテイカーは自分の利益しか求めないため、「手伝ってくれんの?サンキュー」くらいしか思っておらず、逆に手伝ってくれたギバーの仕事は自ら手伝いません。
成功しやすいギバーは他社志向性
成果が出せないタイプは「ギバー」なのにもかかわらず、もっとも成果を出すタイプも「ギバー」です。
二極化された「ギバー」の大きな違いは、「自己犠牲型(前述)」か「他社志向型」ということです。
例えばチームで仕事をする場合、自己犠牲型ギバーは他人の仕事を手伝い自分の仕事は後回しにすると先述しましたが、他社志向型ギバーは「チーム全体の幸せを考え成果を出す」という思考を持っています。
ビジネスの上で、チームがある成果をあげたとき、他社指向性ギバーは自分の手柄にするのではなく、必ず自分以外のチームの手柄にします。
アメリカの史上最長寿アニメ番組「ザ・シンプソンズ」は知っている人も多いと思いますが、プロデューサー兼ライターである「ジョージ・マイヤー」はこのアニメの仕掛け人でもあります。
そんなジョージ・マイヤーですが、「ザ・シンプソンズ」だけでなく、手掛けた舞台やテレビ番組のスタッフ陣からの評判が絶大なのです。
その理由はジョージ・マイヤーは一貫してギバーだからです。
マイヤーのギバーぶりは「ザ・シンプソンズ」でも変わらなかった。
作家たちのあいだで一番人気のある仕事は、エピソードの最初の草稿を書くことなのだが、それは、自分の独創性をはっきりとアピールすることができるからだ。
マイヤーはエピソードのためにたくさんのアイデアをひねり出したが、最初の草稿を書くことはめったになかった。それよりも自分のスキルは手直し作業に活かすべきだと考え、面倒な仕事を引き受け、六ヵ月かけて各エピソードを修正した。
これこそ、ギバーの協力の仕方の典型だろう。自分個人の利益よりも、グループにとって最善の利益になる仕事を引き受けるのだ。こうすることで、グループ全体が恩恵を受ける。
(中略)
成功したギバーは、自分だけでなくグループ全員が得をするように、パイ(総額)を大きくする。自分の時間と知識をしょっちゅう分け与えて同僚を助けている人びとは、銀行から製造企業にいたるまで、昇給や昇進のチャンスが増えることがわかっている。
参考:本書 GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代ーPART3 チームの総力を活かせる人より
このように、自分の利益よりチームの成功を望むギバーは皆からの評判が良く、別の仕事を受注しやすいということです。
ジョージ・マイヤー本人もギバーらしく次のことを述べています。
「世間は本当に狭いですね。テレビのお笑い番組を書いていたら、いつも顔を合わせるのはせいぜい数百人しかいないんですから」とマイヤーはいう。
「この人たちを遠ざけないほうがいいに決まっています。だって、たいていは口コミや人からの推薦で仕事を得ることがほとんどなのですから、評判がいいに越したことはありません。そうしたらがぜん、ほかの脚本家たちを味方だと思えるようになりました」
参考:本書 GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代ーPART3 チームの総力を活かせる人より
映画「ペイフォワード」で学ぶギブ
2000年(日本では2001年)に公開された、映画「ペイフォワード 可能の王国」はご存じでしょうか?
ちなみにペイフォワード(Pay foreard)とは「恩送り」という意味。(字幕版では「次へ回せ」と言っていましたが)
主演の一人、ハーレイ・ジョエル・オスメントの感動作です。
超感動映画と言えます
簡単なあらすじ
ラスベガスに住む中学1年生のトレバー(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、学校の授業にて担任のシモネット先生から生徒全員に「もし自分の手で世界を変えたいと思ったら何をする?」という課題を与えられました。
生徒たちは子供らしい提案をしていきますが、トレバーが提案したのはこの「ペイフォワード」。
自分が受けた善意や思いやりを、その相手にお返しするのではなく、別の3人に渡していくというものでした。
薬物中毒の男やいじめられている同級生へ善意を行いますが、なかなかそう上手くはいかないもの。
しかし、諦めかけていたトレバーの気づかないところで、このバトンは次々に受け渡されていました。
20年前の映画ですが、こんな世界になればいいなと漠然と考えていたことを覚えています。
この映画を見てからボクのギバー精神が芽生えたと言っても過言ではありません。
ラストは衝撃で、そして切なく優しい気もちになれる映画です。
ぜひ見てほしい。
これが実現すれば優しい世界になれる
送られてきた善意を、送った人に返すのではなく別の3人に渡すのです。
善意の内容は自由であり誰でもいいのですが、これはまさに成功するギバーの精神そのものでしょう。
つまり「強制的に見返りのないルール」なのですから。
これで人を救えたり、救われた人がまた誰かを救えるのって革命ですよね。
もっともっと取り上げられたらいいのに、と思います。
漫画「正直不動産」で学ぶギブ
正直不動産(しょうじきふどうさん)
原案:夏原武
脚本:水野光博
作画:大谷アキラ
『千の言葉のうち真実は三つしかない』という意味で、千三つといわれる不動産業界。そんな業界に身を置く永瀬財地は、契約のためなら嘘をいとわずに営業成績をあげてきた。しかし、地鎮祭のときに祠を破壊してしまったことで、嘘がつけない体質になってしまった。わがままな顧客の要望、一癖も二癖もある資産家大家たち、次々起こる不動産にまつわるトラブル、そしてライバル不動産会社としのぎを削る闘いに、嘘をつかない正直営業で立ち向かう永瀬の姿を描いた皮肉喜劇。
引用:正直不動産ウィキペディアより
嘘や隠ぺいばかりの不動産会社
漫画ですのでかなり誇張している描写もあるとは思いますが、我々不動産素人からしてみると、仲介業ってここまで嘘や隠ぺいばかりしているのかと心底疑いました。
会社の儲けのためとはいえ、客に平気で嘘をつき、契約を取る。
自分も家を借りたり、家を買ったりしましたが、裏ではコソコソと必要のないものを積まれていたのかもしれません。
嘘がつけない主人公「永瀬財地(ながせさいち)」
祠を壊した呪い?により、嘘がつけなくなってしまった主人公永瀬は、今までの嘘や隠ぺいで契約を取る方法はもう使えません。
はじめは嘘が付けないことで戸惑っていたものの、徐々にカスタマーファーストの意識になることで、会社や自分の利益以上に客の利益を優先するようになります。
会社をクビになりそうな崖っぷちの状況に陥っても、お客さんに寄り添った対応を崩さず(崩せず)、お客さんの口コミにより利益を取り戻していきます。
自分より相手のことを考えるギバー
嘘が付けない体質は置いておいて、相手のことを考えてギブしていくことで徐々に成功への道が拓かれていきます。
先述したジョージ・マイヤーの一言でも、口コミや人からの推薦により仕事がもらえると言っているため、相手のことを考えて行動し、結果を出すことが成功への道なのだと思います。
それが分かりやすく漫画で読めますので、ぜひお試しください。
まとめ:自分の手柄ではなく相手を称賛しよう
ビジネスにおいて最も収益や脚光を得やすいタイプはテイカーかもしれません。
しかし自分本位な考え方ゆえに、相手にも何も返さないため、関わった周囲の人からの人望はありません。
目先の成功はつかめても、人望がない人に継続的な成功は望めないのかもしれません。
自分がいったいどのタイプで、上司や部下はどのタイプに当てはまるのか。
そう考えながら読み進めてもらうのをおすすめします。